高血圧 治療
血圧コントロール
高血圧の治療の目的とはなんなのでしょうか。高血圧とは慢性疾患の一つで、「これさえ克服すれば大丈夫」ということはなかなか言えないものなのです。
様々な要因で引き起こされている高血圧。その治療は、いろいろな理由で上昇してしまっている血圧をコントロール、つまり、一定の数値まで下げて安定させることが最大の目標だといえます。
血圧は一日のうちでも上がったり下がったりしています。現に、瞬間的にはかなり血圧が上がったとしても、ただちに身体に害がおよぶというわけではありません。高血圧とは、主に一日の血圧の平均的な水準が慢性的に上がっている状態のことです。したがって、血圧コントロールとは、1ヵ月から数ヶ月、あるいは1年間単位での血圧の変化をコントロールしていくことを意味します。日々の継続が重要なので、一日単位での変化に一気一憂する必要はありません。
医療技術の進歩で、脳卒中などの高血圧による合併症が起こったときの、後遺症を最小限に止めたり、今までは救えなかった命が救われるようなケースも増えています。しかし、病気の発生数は下がっていないのが現実です。高血圧の合併症は、大変重い症状ばかりなので、最も重要なのは予防です。しっかりと血圧をコントロールしていきましょう。
降圧目標
血圧のコントロールには、血圧を測定することが、まずは第一歩です。
血圧の測定方法にはいろいろありますが、高血圧と診断され、本格的な治療を開始しているというのであれば、自宅で血圧が測定できるような環境を揃えましょう。重い高血圧の場合は原則毎日、軽いのであれば週1回、中程度であればその中間程の頻度。これがだいたいの目安です。病院や薬局では「血圧手帳」を配布しているところもあるので、それを積極的に利用して、日々の血圧を記録していきましょう。
家庭で血圧を測定する際に問題となるのは、血圧がどのくらいの範囲にあればよいのかということです。適切な血圧測定方法によって、測定された血圧だという前提で、降圧目標は原則として上が130mmHg、下が85mmHgとされています。ただし、もともと高血圧だった人や高齢の方は、この数値が緩くなります。
高血圧と診断された人は、急に血圧を下げると副作用がおこることも考えられ、よほど極端に数値が高くないのであれば、徐々に血圧を下げるように指導されます。したがって、短期的な降圧目標は130mmHg/85mmHgよりも高いところに設定される場合があります。医師と事前に相談して、焦ったりすることのないようにしましょう。
また、高齢者は血圧が健康な人でも高くなる傾向があり、降圧目標は中年までの人より若干高くなります。
運動療法とは
高血圧の治療の中心的な役割を果たすものとして、運動療法があります。
運動といってもいろいろありますが、高血圧の治療として推奨されているのは、全身を動かして酸素をたくさん取り込む有酸素運動を無理のない強度で長く続けることとされています。
運動すると血圧が上がります。ところが、酸素をたくさん使う有酸素運動を長期間くり返すと、普段の血圧を下げる作用があることがわかっているのです。また、血流やエネルギー代謝がよくなり、心臓病や糖尿病などの合併症を防ぐことにも役立ちます。
具体的には例えば、早朝に散歩(ウォーキング)に出かけるのもよいでしょう。だいたい最低30分間程度を一回とし、一日一回、週に5~6回行うのが理想とされています。毎日出来ない人は、週一回程度でもいいので、1時間程度行うとか少し長めにウォーキングを行いましょう。
ウォーキングはもっとも負担の少ない有酸素運動の一つで、安全なものですが、ひざが悪かったり高齢の方には負担が大きい場合もあります。あくまでも無理をしない程度に、運動中に体調の悪化を感じたらすぐに中止して休みましょう。
現代人には運動不足の人が多いといわれています。特に高血圧に人は、普段からほとんど運動しないという人も少なくありません。最初から無理をせず徐々にならしていくようにしましょう。
運動療法の注意点
高血圧の運動療法で推奨されるのは、あくまでの軽い有酸素運動です。
身体の太い筋肉を激しく使うような無酸素運動、たとえばサッカーなどの激しいスポーツや筋トレは運動療法には向きません。むしろ、高血圧の人にとっては、ふだんから高い血圧をさらにあげてしまうので、大変危険だといわれています。
また、お父さん方が大好きなゴルフは、実はドライバーショットやパッティングのときに、緊張で筋肉が硬直し、かなりの負荷がかかっています。精神体にも肉体的にも強いストレスになりかねないので、運動療法となるかどうかは微妙なところです。ゴルフを続けるのはよいですが、ほかにも勝敗を問われないような軽い有酸素運動を日々の生活に取り入れるとよいでしょう。
実はウォーキングなどより、より手軽で安全、身近な運動療法があります。それは家の中の仕事、家事や掃除を行うことです。やってみれば分かると思いますが、掃除というのは意外と体力を消耗するものです。実際に床掃除などの家事によって消費するカロリーは、ジョギングやエアロビクスに匹敵するといわれています。もし、自分で部屋の掃除などをすることがないという方は、是非とも習慣にしてみてください。
あまりにも重い高血圧となると、軽い有酸素運動まで制限されることがあります。そのときは、きちんと医師の指示に従って、運動できる程度に回復してから始めるようにしましょう。
生活習慣の改善
高血圧治療には、大きく分けて「非薬物療法」と「薬物療法」とがあります。
薬で血圧コントロールを行う薬物療法は、主に重い高血圧のときに実施されます。食事療法や運動療法などの非薬物療法は、症状にかかわらずほとんどの患者さんが行っているものです。
非薬物療法は食事療法と運動療法が主ですが、それ以外にもいくつか挙げられます。
禁煙もその一つです。喫煙はそれ自体で一時的に血圧を高める効果があるだけでなく、長期的に身体のいたるところをむしばんでいきます。「1本で5分」寿命が縮まるという話もあるくらいで、肺がんのリスクを高めたり、全身を巡るニコチンの作用で動脈硬化や血管障害を誘発する場合もあります。全身に与える影響を考えると、すぐに禁煙の努力をされることが懸命だと言えます。
また、生活のリズムを保つことも重要です。規則正しい睡眠や食事のリズムは、全身の病に対する抵抗力を強めてくれます。毎日、できれば同じ時間に睡眠を取り食事をすることが重要です。
また、細かなことでは便秘を解消することも高血圧解消に役立ちます。便秘をしているだけで血圧が上昇してしまうことが知られており、それを解消するだけで治療効果が望めるのです。
高血圧の危険因子
高血圧の治療は、まずは血圧コントロールをすることです。では、なぜ血圧コントロールをするのかというのは、いくつかの理由が挙げられます。
一つは、将来の心臓や血管、内臓の重篤な病、心筋梗塞や脳卒中、腎不全などの合併症を未然に防ぐためです。これらの合併症は一度患うと不可逆後遺症が残ることが少なくないほか、命を落とす危険も高いものです。それらの予防のために、血圧コントロールをしていかなければなりません。
もう一つは、血圧コントロール自体が、治療効果をもっているからです。いわば、高血圧は血圧上昇とその危険因子、両方の意味合いをもっているのです。
高血圧の危険因子と考えられているものには、糖尿病や高脂血症、肥満、心血管病などが挙げられます。これらは高血圧の合併症として現われることもあり、原因と結果が同一であることも少なくないのです。
要は、高血圧の危険因子はさまざま考えられますが、食生活や運動不足、ストレス過多など"生活習慣の乱れ"という共通の原因をもって関連し合って発症していると捉えることができるのです。
したがって、高血圧の危険因子とよばれるものはたくさんあるのですが、やることは一つ、血圧コントロールをしながら生活習慣を改善することによって、ほかの病(危険因子)もろとも解消することができるのです。
高血圧の医療費
生活習慣病が今、医療関係者のみならず、社会全体から注目されています。というのも、日本は今、高齢化社会を迎え、医療費が年々増え続けているからです。
高齢化社会になってきている国が、生活習慣病などの病で医療費が増えるのはしかたのないことです。これでも日本の医療の国際的な評価は高く、国民皆保険もあり、長寿世界一を維持しているのだから大したものです。
しかし、歴史的にもいままでにないほどの高齢化社会をまえに、優秀な医療体制がどれだけ維持できるのかということが疑問視されてきています。特に高血圧と関わりのある病気(高血圧・虚血性心疾患・脳血管疾患など)の医療費が増え続け、今や65歳以上の高齢者の医療費で、いちばん多くの割合(30%以上)を占めているのです。これをなんとか使用と努力しているのが現状です。
高血圧を定期健診などでできるだけ早く発見して血圧をコントロールするといった二次予防だけでは、限界があると見られています。したがって、高血圧になってしまう前に、若い頃から生活習慣を正していく必要があるといわれています。
医療財政がこれ以上悪化すれば自己責任が問われる時代になってくるかもしれません。若いうちからの予防を心がけましょう。
