高血圧症とは
血圧とは
高血圧とは、文字通り、簡単にいえば血圧が慢性的に高くなってしまう状態のことをいいます。では、血圧とはもともとなんなのでしょうか。なんとなくは想像できることだと思いますが、正確なところを正しく答えられる人はあまり多くありません。
血圧とは、一言で言えば、体を流れる血液が血管壁に対して加えている圧力のことです。私たちの体は常に全身に血液がかけめぐっていますが、この血液が流れているのは心臓がポンプの機能を果たしているからです。つまり、常にエネルギーを消費して老廃物を排出している全身の細胞に新鮮な血液を送るために、心臓というポンプを使って血管に圧力がかけられているのです。このときに、動脈壁にかけられている圧力がそのまま「血圧」ということになります。
血圧は、便宜上は二つに分けられています。単に最高値と最低値、あるいは、上下といってもいいのですが、正確にはいわゆる最高値(上)は「収縮期血圧」という場合もあります。これは心臓が血液を全身に送り出すために"収縮"したときの血圧値です。このときがもっとも高い数値を示します。逆に、血圧を心臓内にため込む「拡張期血圧」のときに血圧が最も低い数値を示します。この上下二つの数値を参考に高血圧の診断を行います。
血圧の変動
血圧は上下があるだけでなく、そのとき置かれている状況によっても変化しています。
例えば、寝ている間よりも昼間のほうが比較すると血圧が高いということがわかります。これは、基本的には活動時には安静時よりも、全身の細胞が多くの酸素などのエネルギーを必要とし、また、老廃物を多量に排出するからだと考えられます。
また、単に時間による変動だけでなく、当然運動しているときと座っているときでは血圧が異なりますし、また、その人の精神状態、緊張しているかリラックスしているかによっても血圧は異なります。
このように、一日のなかでも絶えず変動している血圧ですが、老化との関係も見られます。男女ともに加齢とともに血圧が上昇していくことが一般的です。これはさまざまな要因が考えられますが、主な要因として血管壁の硬化があるといわれています。血管壁の硬化というのは、血管そのものの弾力性が失われていくという意味で、そのことによって血圧にも影響を与えてしまうのです。
実際に年齢と血圧、そして、血管壁の硬化は明らかに相互関係があるように観測できます。年齢を重ねれば重ねるほどに、このような変化にはよく注意して置かなければならないでしょう。
血圧と神経
血圧が人によっても違い、同じ人でも日中に絶えず変化しているということがわかります。では、これらの変動は一体なぜ引き起こされるのでしょうか。
私たちの体には環境に合わせて、血圧をコントロールする機能が備わっています。運動するときには、血液の流れを活発にするために、自動的に心拍数が上がって血圧も高くなります。逆に、安静時には、自然に心臓の活動は抑えられて、心拍数や血圧が下がります。
これらは、自律神経・交感神経などとよばれる「神経」によってコントロールされています。この神経は、心臓の動きのみではなく、血管の収縮や拡張も管理しています。交感神経が緊張状態にあるときは、心拍数が増加するだけでなく末梢血管が収縮して血圧が上がります。逆に、交感神経が弛緩状態にあるときは、末梢血管が拡張して、俗にリラックスして血行がよい(血色がよい)状態にあるといわれるように、血圧が下がります。
このような神経の緊張状態をコントロールしている大元は脳にあります。細かくいえば、脳の視床下部や脳髄、最も中心的な役割を果たしているのは脳髄の血管運動中枢と呼ばれる部分です。これら脳の各機能がその人が置かれている状況を総合的に判断して、神経をコントロールしているわけです。簡単にいえば、脳が自動的に環境に合わせて血圧をコントロールしているのです。
高血圧は病気?
血圧は状況によって高くなったり、低くなったりするものです。では、血圧が高くなること、すなわち高血圧はそれ自体で病気といえるのでしょうか。
確かに、人の血圧は日常的にある程度は上下しているもので、血圧が高いこと、それ自体が短期間で人の健康に与える影響はそれほど大きくありません。しかし、血圧の変動があまりに激しくなってしまうこと、また、慢性的に高い血圧が保たれてしまうような状態が長く続くと、体に対する影響は計り知れないほど大きいものです。その意味で、高血圧はそれ自体で病気である、と言うことができます。高血圧によって、引き起こされる具体的な症状が出て初めて病気といえると考えるかもしれませんが、実際には高血圧になったらただちに治療を始めるべきで、そういった意味ではやはり病気だといえるのです。
それでは、正常な血圧とはどのくらいなのでしょうか。これは実際には個人差があり、なかなか正確なところは断定しにくいところです。人種によっても違うのですが、世界的に最も広く受け入れられているのは、「WHO(世界保健機構)」と「米国高血圧合同委員会」の基準です。日本では日本高血圧学会が「高血圧治療ガイドライン」を作成して2000年に公表した値があります。
高血圧目標値
正常血圧は世界基準のものもありますが、日本独自の基準も使われています。というのも、人種によって正常な血圧の平均値は多少ずれがあるからです。
日本高血圧学会が発表していると正常血圧は、収縮期血圧(上)が130mmHg未満、かつ、拡張期血圧(下)が85mmHg未満とされています。
ただし、年齢や合併症の有無によって診断の基準はことなります。例えば65歳以上の高齢者の場合は、正常血圧は140/90mmHgとされています。75歳以上のいわゆる興起高齢者では、むしろ血圧そのものよりも合併症の注意して診断し、降圧による影響も考えながら治療が行われることになります。
ところが、2003年に米国で発表された勧告では、正常血圧は120Hg/80mmHg未満とされています。ということは日本の基準で診断されてギリギリだった場合には、世界的な基準では高血圧と診断されてもおかしくないということです。世界的に、だんだんと高血圧の基準が広くなり、血圧コントロールに対する考え方が厳しくなっているといえるようです。それだけ現代人が高血圧による弊害を受けやすくなっているといえ、日本人であっても警戒が必要だといえるでしょう。
高血圧の分類
一言に高血圧と言っても、種類が一つしかないわけではありません。高血圧は患者の収縮期血圧と拡張期血圧の数値から判断して、そのなかでも重症度によって3段階に分類されています。
最も軽い軽症高血圧は、収縮期血圧140~159mmHg、拡張期血圧90~99mmHgの範囲にある患者です。次に中程度のリスクをもつ中等症高血圧は、収縮期血圧160~179mmHg、拡張期血圧100~109mmHgの範囲にある人、もっとも危険でただちに適切な治療を始めなければならない重症高血圧は、収縮期血圧180mmHg以上、拡張期血圧110mmHg以上とされています。
また、治療においては別の分類が用いられる場合もあります。高血圧には、原因が比較的はっきりと特定できる二次性高血圧と、原因の特定が困難な本態性高血圧があります。
二次性高血圧というのは、別の内臓疾患をもっている人で、その影響で高血圧が生じている患者さんのことを言います。腎臓、心臓、血管、そのほか内分泌系の異常によって、血圧を正常値にコントロールできなくなっている状態ですので、このケースではほかの疾病が完治すれば血圧も落ち着きます。
一方、原因の特定できない本態性高血圧は、原因が複雑で生活全体を見直すような総合的な治療によって、対処するしかありません。実は日本人の高血圧は、ほとんどが本態性高血圧でその割合は、80パーセント以上だといわれています。
